はじめに
世界中の現地体験ツアー・アクティビティ予約を扱う国内最大級のオンライン旅行予約サイト「VELTRA」を展開するベルトラ株式会社。
同社は、これまで自社プロダクトの磨き込みによる着実なオーガニック成長を続けてきましたが、現在は中期経営計画の達成に向けた「非連続な成長」の実現という、新たなフェーズを迎えています。
従来の「単一事業のPL最大化」から、獲得したキャッシュを戦略的に配分し「事業ポートフォリオを構築する経営」への転換を模索する中で、自社主導によるM&A推進体制の構築を重要課題として掲げていました。
ノーチラス・キャピタル(以下NC)では、M&A実行体制の構築や投資判断基準の策定など、M&A推進体制に関わる内容をスコープレスに支援してきました。経営陣の間ではM&Aが現実的な成長手段として具体化され、組織全体で投資と向き合う環境づくりが進んでいます。
これまでの取り組みの軌跡と組織に現れた変化について、取締役CFO皆嶋さん、執行役員・経営企画室長の小林さん、広報室長・戦略的パートナーシップ担当の三田村さんにお話を伺いました。
プロジェクトサマリー
企業概要
- 支援企業名:ベルトラ株式会社
- 事業内容:世界中の現地体験ツアー・アクティビティ予約を扱う国内最大級のオンライン旅行予約サイトの運営
- 上場区分:東証グロース市場
プロジェクト概要
- 支援内容:M&A推進体制の構築支援
- 支援期間:約6か月
M&Aを検討し始めた背景
経営メンバーの中で、M&Aを検討し始めた背景を教えてください。
当時のことを振り返ると、M&Aの手前の段階で「我々はどうやって成長していくのか」について、経営陣で共通認識を持ち、方向性を明確にする必要があると考えていました。
いざ成長の方向性が決まった時の手段としては、社内で新規事業を立ち上げるという選択肢もありますが、方向性が明確になればなるほど、M&Aという選択肢の重要性は高まっていくだろうと。いつかそのタイミングが来た時に、M&Aを推進していける体制をどう準備しておくべきか。それが、今ここにいる3名のメンバーに課せられたミッションだと思っていました。
一方で、M&Aという選択肢が自社で推進できると社内でも理解されれば、より成長戦略の議論が深まるのではないかという思いもありました。「体制構築」と「戦略立案」の両軸で取り組むことによって、会社としての成長戦略を明確に推進できるのではないか、という課題感を持っていました。
中期経営計画を実現するためには、自社単体ではない成長をどう見出すか。これを構想として経営層で話してはいましたが、当時はまだリアリティがない状況でした。それに対する具体的な打ち手が必要だ、という課題感でした。
タイミングがあの時期だったのは、コロナの緊急事態対応が一段落して、ようやくそちらに頭を割けるようになったという背景もありましたか?
フェーズで言うと、コロナ対応自体は2024年頃に終わりが見えてきて、2025年はどう成長していくかという時期に入っていました。いざマーケットが回復して想定したグロース戦略を実行する段階になった時、既存事業単体の成長に頼ることなく、早めに次の打ち手、手数をきちんと持っておかなければならない、という状況でした。
上場ベンチャー企業ならではの課題感
M&Aの準備段階で、上場ベンチャー企業特有の課題感はありましたか?
大企業と比べて、やはり「単体事業」を前提とした経営マインドが非常に強いなと感じます。「事業ポートフォリオ」という考え方を持つのは、なかなか難しい状況にありました。
自分たちでサービスを作り、自分たちで成長させるというモデルが前提で議論が進んでいく。そこを考え直さなきゃいけないフェーズが来ている。新しいOSをインストールするというか、そこが成長の鍵なのかなと感じています。
小林の言う通り「過去の成功体験」への囚われは課題感としてあったと思います。ベルトラというOTA事業をメインで展開し、オーガニック成長を続けてきた成功体験ゆえか、どうしても意識が内部の成長ばかりになりがちでした。
上場ベンチャーだからかは分かりませんが、内部成長以外にどこに投資をしていくかについて、社内で完全にコンセンサスが取れているわけではない。これも内部成長にこだわってきたがゆえの難しさだと思います。全体投資として考えた場合に、アライアンスも含めてM&Aも手法の一つなんだ、という方向へ持っていくことへの難しさがありました。
確かに8ヶ月前を思い出すと、キーワードはキャッシュアロケーションでしたよね。プロダクトやオペレーションが優れていて、磨き込めば伸びる状況だったからこそ、意識が内側に向いていたと。
まさにそうです。創業時はとにかくそのビジネスを成長させていくことが重要で、PL的に売上や利益をどう残すかが経営戦略でした。
しかし、ステージが変わると「事業戦略=経営戦略」ではなくなるタイミングが来ます。PLだけでなくBSサイドをどう拡大するか。獲得したキャッシュをどうアロケーションし、投資として戦略に当て込んでいくか。BS自体の価値を広げていくことが経営戦略になっていく。
今はちょうどその狭間にあって、そこで認識を切り替えられないと、全てがPLの話で終わってしまう難しさがあると思いました。
実際に事業を伸ばすフェーズから、投資やM&Aを並行して取り組むとなった時、意思決定における不安や怖さはありましたか?
私のイメージですが、「プライドを捨てる難しさ」という側面がある気がします。自分たちがやってきたことだけでは足りない、と認めなきゃいけないような。自尊心を揺るがすような話は当然嫌なことなので、決めづらさがある。
加えて、まだ見えない未来への不安感。この2つは課題だったと思います。 今回、M&Aにおいてそこをクリアにしていく具体的なプロセスが必要だと思っていました。
ノーチラス・キャピタルを選んだ理由
社外リソースの活用を検討する中で、弊社を選んでいただいた決め手は何でしたか。
まず、高橋さんの連絡のタイミングが、とにかく絶妙だったんですよね(笑)
最初に接点を持ったのはM&Aの支援ではなく、IRの件でしたよね。そこで課題を共有させていただき、アドバイスをいただいた時の印象もすごく良かったんです。 高橋さんは柔らかい方で、的確なアドバイスをいただきつつも、一旦ちゃんと受け止めてくれる。我々のようにM&A経験が少なく、先が見えない中で好き勝手言っている内容を、一旦受け止めた上で、的確に伝えてくれる。そこに信頼感がありましたね。
また、個人的には、M&Aをサポートしてくれる会社は他にもありますが、やはり「事業会社でちゃんとM&Aを経験してきた」というところが、我々が求めているものに応えてくれる重要な要素だと思っていました。 それが超大企業での話なのか、それともギフティさんのような我々もイメージが湧く規模の会社での話なのか、という点も重要でした。我々の少し先を行く先輩のようなイメージですね。
我々が抱えている課題に対しても、的確にアドバイスいただけるんじゃないかと思いました。事業会社でのM&A推進者であった、という身近さは私の中で大きかったです。
ありがとうございます。プロジェクトを共に進める中で、NC全体にはどういう印象を持たれていますか?
先回りして色々なことを考えて提案してくれる印象が、もの凄く強いですね。我々が言ったことをまとめるだけでなく、「勝手にまとめてきちゃったんですけど」と出してきてくれる(笑)。我々にない視点が多いので、中だけでやっていたらそうはならない。そこはすごく重要だなと思います。
そのようなこともありましたね。「勝手にこの辺の会社を買ってみても面白いんじゃないかと思ったのでリストアップしました」とか。自治体を巻き込んだ施策や他社の事例なども引き合いに、色々な提案をさせていただきました。
私は、勝手だからこそ良いと思っています。理解してもらうことでコミュニケーションは効率的になりますが、どうしても同質化してしまう。個人的には、新しい視点をもらえる方がありがたいです。
小林さん、皆嶋さんの話を伺うと、「外部視点を持ったインサイダー」というのがNCのキーワードかもしれませんね。ありがとうございます。
プロジェクト中の気づき
ターゲット領域の選定や市場分析といった初期段階からご一緒しましたが、この中で新しい発見はありましたか?
業界の見方、ポートフォリオの作り方の切り口を整理していただいたのは大きかったです。バーティカルでいくのか、ホリゾンタルでいくのか。特にバーティカルについては、例えばサプライヤーの買収も含めた話など、漏れがちだった視点を再発見できました。
やり方自体にリアリティを感じたのは、それが他社が既に実行している戦略に基づいた整理だったからです。現実味があってイメージしやすかったですね。
全体的に非常に客観的でした。知見に基づいた意見や、ベルトラという事業についての考え方は、広報の視点からも大きな発見がありました。NCさんが作ってくれた、パルテノン神殿のような成長の4本柱の図解などは、さすがプロだなと。そのまま会社説明資料に使いたいスライドがいっぱいありましたね。
プロジェクトの成果
M&Aに対する印象は、この半年で変わりましたか?
実務は、思っていた以上に大変そうだなと。リアリティを持てば持つほど、「ここが我々のボトルネックになりそうだな」という感触がありました。企業を見つけて買収する、というイメージはありましたが、DDを含めたプロセスに「こういう深さがあるんだ」とリアルに感じたところです。
私は2点あります。まず発見としては、我々3人でM&Aを視野に入れて会話することが増えてきたなと感じています。他にも、社員との間でもM&Aの話をする機会が増えてきた。 社員も含めて、実はM&Aに興味を持っている人が多いというのは、新たな発見でした。
あとは、「投資をどう進めていくか」が課題としてあった中で、最初にお話しした通り、M&Aに限らず「投資をどう管理するか」「投資のガードレールをどう作るか」という話も含めて進めていきたいと考えていました。
我々の中でぼんやりとしていた「投資というものはこうあるべきだ」というものが、点と点だった状態から、線で結びついて理解度が高まった感覚がすごくあります。キャッシュアロケーションも含め、投資をどう考えていくべきかが明確になった分、社内に対して伝えやすくなったなと思っています。
あと、「味方がいるっていいな」とひしひしと感じたプロジェクトでした。自分たちがやってきたことは間違いではない、と感じることができました。
このようなコンサルティングサービスのROIについてはどう考えていましたか?案件が舞い込んできてから社外リソースを使うのではなく、あえて準備の段階から、とお考えでしたよね。
同じ金額を払って経験者を採用することもできるかもしれませんが、中に入るとパフォーマンスが限定されたり、例えば私や小林の部下になってしまうと、フレッシュな視点がどんどんなくなってしまう。視点が組織と同化してしまうんですよね。 我々にない視点を持っていることが重要でした。
そして、推進していくためのクライテリアを作って、社内に納得してもらうというゴールがある中で、きちんと外部の意見を取り入れて検討しているというのは、説得力という点でも、意外と重要なんです。 能力を持っている人をアサインしたとしても、このタイミングでは、社外リソースを活用したほうが得られる結果は高い、という印象を強く持っています。
今後の展望
戦略と体制について解像度が上がった今、今後どのようにM&Aを推進されるか展望を教えて下さい。
目指す会社像をクリアにしないと、当然そのM&Aという手段だけの話になってしまうと思っています。今回は、本質的には先にビジョンを立てて動くべきところを、一旦先にM&Aが推進できるというリアリティを固めました。 本質的な順番ではないことは課題かもしれませんが、逆に言うと、もう手段はできている。あとは経営全体でこの事業ポートフォリオをどう作っていくか、というところを推進したいですね。
ありがとうございます。順番の話がありましたが、M&Aという手段を手に入れたからこそ、全体を俯瞰して枠組みを書き直せる、ということも多々あると思っています。生々しいところでは、そういう順番を経ている会社さんも結構多いですよ。全然違う話ですが、料理も薪の火でやっていた時代から、ガスが生まれたことで、常に同じ火力を出し続けられるようになり、できる調理法が広がって想像力も広がった。そこに似たアナロジーがあるのかな、と思っていました。
面白いですね。こういう順番でも動けるんだという話はあると思います。やはり最初は理想に囚われがちですが、それだと動かないことも多い。まず「動く」ことができたのは、今回すごく大事だったんじゃないかなと思います。
このプロセスを通じて、投資クライテリアなどの細かいところを、すごく丁寧に寄り添って作っていただいたなという印象があります。私は現場に近い人間なので、日々向き合っている数字やパートナーさんとの取引関係と、会社の成長に繋がるM&Aがなかなか結びつきにくい面もあったのですが、このプロセスを通じて「リンク」がつけられたというか。ちゃんと関係しているんだ、という実感を持てたのが個人的な感覚としてありました。
最初から専門人材を社内で用意できることは少ないと思います。NCさんのようなサービスを使う場合でも、クライテリアを作るプロセスを通じて、これまで積み上げてきたアセットときちんと結びつけ、体制強化しながらプロジェクトを推進できている。私としても自信を持てているところです。安心して委ねてしまっていいのかなと思います。
インタビューは以上になります。本日は貴重なお話をありがとうございました!
