はじめに
「M&Aの必要性は痛感しているが、専任リソースがなく経営企画部門が兼務しているため、案件の創出や実行に手が回らない」 「組織として、M&Aに関する高度な専門知見が蓄積されていない」
ノーチラス・キャピタルを創業して以来、経営者の方々からこうした切実なご相談をいただく機会が急増しています。
背景にあるのは、日本におけるM&A活用シーンの劇的な変化です。「グロース100億問題」への対応や、スタートアップによる買収戦略、上場企業の事業再編など、M&Aはもはや特殊なイベントではなく、日常的な経営手段となりました。
そこで今、改めて注目されているのが、Corporate Development(以下、CorpDev)という専門機能です。本稿では、次なる成長ステージを目指す上場企業やレイターステージのスタートアップに向けて、国内の先進事例を交えながら、その役割と重要性を解き明かします。
Corporate Development(CorpDev)の役割
CorpDevの役割は、自社の成長戦略に資する「非連続な施策」の実行にあります。具体的には、以下のような対外的なコーポレートアクションを担います。
- M&A: 市場シェア拡大や新ケイパビリティ獲得のための買収。
- アライアンス: 戦略的資本業務提携やジョイントベンチャーの設立。
- CVC・マイノリティ投資: オープンイノベーションを目的としたスタートアップ投資。
- 事業売却・カーブアウト: ポートフォリオ最適化のための非中核事業の切り出し。
GAFAMなどの米国のハイグロース企業では一般的な専門機能ですが、近年、日本でも非連続な成長を志向するグロース企業を中心に、部門を設置するケースが増えつつあります。
CorpDev専用部門の必要性:経営企画との違い
上記はすべて、外部とのハードな交渉を伴う実務です。一方、日本企業の「経営企画」の多くは、予算管理(FP&A)からIR、経営会議の運営まで、その管轄は広範です。この通り、経営企画の既存業務とM&A実務には、業務の性質上の違いがあります。
求められるケイパビリティの違い
経営企画の仕事は、月次の予算管理や取締役会の運営、社内各部署との合意形成など、「社内向けの調整業務」に集約されます。
対してM&A実務は、大半が「対外的な交渉業務」です。 対象会社や、仲介会社、FA、士業と対峙し、相手の「本音」を引き出し、泥臭い条件交渉をまとめ上げる突破力が求められます。
致命的な時間軸の違い
さらに深刻なのが、時間軸の相違です。
経営企画には、決算や経営会議など、絶対に動かせない「社内カレンダー」というルーチン業務が存在します。
一方で、M&A実務は不確実性が極めて高い業務です。案件の発生タイミングをコントロールすることは難しく、交渉においては競合の出現や期限の設定など、常に時間的な制約と即時的な判断が求められます。例えばDDで致命的な論点が発覚すれば、数日後の意思決定に向けて一気に資料を仕上げなければなりません。
M&A推進の専門機関として
まとめると、M&A推進は経営企画が兼務する業務としてはあまりにも負荷が大きすぎるのが現実です。(私の経験から言っても、M&A推進の過酷さは想像を絶するものがあります。)
そのため、米国や日本の先進的な企業では、高度な専門性と圧倒的な実務リソースを要する独立した機能として認識し、FP&A部門、投資・アライアンスはCorpDev部門と明確に切り分けていることが多いと認識しています。
これは単なる組織構成の問題ではなく、ディールの成否、ひいては買収後のPMIを完遂できるかどうかという死活問題につながるからです。
コーポレートデベロップメントの国内事例
日本国内でも、M&Aを経営戦略に組み込み、非連続な成長を目指す企業が登場してきています。
マネーフォワード
マネーフォワード社では、ゴールドマン・サックス、MUFG、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを歴任された上利氏が、2025年8月にグループCCDO(Chief Corporate Development Officer)として参画されました。また、同社は直近、ソニーグループの勤怠管理SaaS事業の買収を発表したことでも注目を集めています。
上記の取り組みからは、M&Aを経営戦略の標準装備として、必要不可欠な機能に位置づけていることが読み取れます。
【参考】
https://corp.moneyforward.com/aboutus/director/
https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20260213-mf-press-2/
メドレー
メドレー社においても、CCDOのポストが用意されており、尾割氏が務めています。尾割氏は、SMBC日興証券、カカクコムの経営企画部長を経て、同社に参画されました。
医療・ヘルスケア領域を中心に、既存事業との高いシナジーを見込めるM&Aを継続的に実行するなど、CCDOをトップに、戦略的なCorpDev体制を構築することで、非連続な事業拡大を成し遂げています。
【参考】
https://www.medley.jp/ir/directors/
SmartHR
国内SaaS市場を牽引するSmartHR社も、M&A推進体制を急速に強化している代表格です。同社はCFO直下に「コーポレート戦略本部」を設置し、中長期戦略の策定とM&A実行を同一組織で管掌することで、資本政策と事業戦略が高度に直結した体制を構築しています。
2025年以降、初の株式100%取得によるグループ会社化やITコンサルティング領域の取り込みなどを機動的に実行するなど、CFO主導のM&A推進が、同社の次なる成長フェーズへの飛躍を支える強力なエンジンとなっています。
【参考】
https://smarthr.co.jp/news/info/20260114_kickzaissue/
コーポレートデベロップメントのジレンマ
ここまでCorpDevという「専任組織」の重要性を説いてきましたが、いざ自社に実装しようとすると、一つの現実的な壁に突き当たります。それは、「M&Aの案件数」と「それを支える人材の固定費」のジレンマです。
「フルタイム」で抱えることの非現実性
SHIFT社や前述のマネーフォワード社のように、年間に複数件のM&Aを継続的に実行し続ける企業は多くありません。 多くの企業にとって、大型のM&Aや戦略的提携は、数年に一度の「勝負どころ」として訪れます。
この不定期な案件のために、年収1,500万〜2,000万円クラスの高度専門人材をフルタイムで抱え続けることは、平時のROIの観点から見て、非常にハードルが高いのが実情です。
「兼務」という名の折衷案と、その限界
そのため、多くの国内企業では「CorpDev専任」ではなく、他の重要業務と兼務させることで落としどころを探っています。例えば、カカクコム社では、 エンゲージの買収など、M&Aによる事業拡大を本格化させていますが、実務を担うのは「新規事業開発」や「インキュベーション」をミッションとする部門です。
「新規事業・提携推進 兼 M&A担当」との兼務は合理的な側面がありつつも、前述した通り、案件のピークに合わせてリソースを配分することが難しく、勝負どころで十分な推進力を発揮できないというリスクもあります。
終わりに:解決策としての「レンタルM&A推進室」
ノーチラスキャピタルが提供する「スコープレス型M&A実務コンサルティング」は、まさにこのジレンマを解消するための新しい選択肢です。
(代表の高橋自身が、事業会社時代に経験したM&A推進の現実を原体験として開発したサービスです。)
プロの知見を「変動費」として実装する
私たちのサービスは、必要な時に、必要な分だけ、CorpDevのプロ人材を貴社のチームにアサインするモデルです。 専任チームを抱える固定費リスクを負うことなく、上場企業の投資実務や戦略コンサルで修羅場をくぐり抜けてきたメンバーの「実行力」を、最短翌日から自社内に実装できます。
「外注」ではなく「中の人」として
私たちがこだわっているのは、中の人を超える中の人というモットーです。 Slack/Teamsに入り、経営陣と同じ熱量で、社内調整から泥臭い資料作成までを、業務範囲なくスコープレスに推進します。CorpDev機能として、M&Aに必要なあらゆる検討を行い、非連続の成長を支えます。
これからM&Aを経営戦略に取り入れていきたいとお考えの経営者の方は、ぜひ一度「レンタルM&A室」にご相談ください。(初回、相談無料です。)
M&Aの専門家チームが、貴社の状況に合わせた最適なCorpDev活用方法をご提案いたします。
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